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【書評】『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』〜“乾けない世代”への「激励」としての解体書

散々言われてきていることではあるが、ミレニアル世代は現在の「低欲望社会」牽引している。議論が分かれるところではあるが、本書はそれを前提にしたオピニオンであり、そのミレニアルズの価値観が如何にして成り立っているのかを解き明かす。そして解体書と言っておきながら、彼らへの励ましの言葉に満ちている。


いちおう説明しておくが、ミレニアルズとは物心ついた時からインターネットが身近にあった世代、1980〜2000年代初頭生まれの人たちを指す。デジタルネイティブであるがゆえに、それ以前の生まれの人たちとはライフスタイルや価値観に隔たりがある、とはよく言われることである。

出典:ジェネレーションY - Wikipedia

 

本書で著者は、そのミレニアルズを“乾けない世代”と表現する。「上の世代」が自分の空腹や承認欲求を満たすためにガツガツ働いてきた「モーレツ」だとしたら、それは飢えた自らを潤すために頑張る「乾いた世代」であり、逆に生まれた時から全てが用意されていたミレニアルズは、そうしたモチベーションを持つことができない「乾けない世代」というわけだ。

 

そんな著者も、初めは(日本の)ミレニアルズを理解できなかったひとりだ。しかし、本書を製作していく過程でミレニアルズを「乾けない世代」と表現した時、彼らに対する意識が変わり、彼らの価値を理解した。

「尾原さんが言っていることを考えると、若い人達が理解できますよ。彼らは『ないものがない』だから『乾けない』。でも、上の世代は『ないものがある』こと至上主義だから噛み合わないし、彼らの良さが活きないんですね。」

(中略)それから、色んなところで若い方々と改めて話をし直しました。本を読みました。(中略)自分なりに理解の幅を広げていくことで、「ゆとり世代」「さとり世代」といって自分のなかで理解せずに価値ゼロと言っていた方々が、どれだけ可能性に溢れた方々か、未来により近い方々からっていうことが見えてきました。

 

そこから著者は、“乾けない世代”の特徴として「シェア精神」や、残業嫌い、“既存のモノに「新しい意味」を提供”しようとする精神性などを挙げ、またそれこそが彼らの強みであると言う。

メルカリで頻繁に売買されているモノのひとつに、使いかけの口紅があります。ぎょっとしますよね。(中略)しかし、じつは非常に合理的な方法で売買されているのです。口紅は、使ったところだけ斜めに切り落とせば、新品と同じです。そして口紅は小さいので、送料も少額で済みます。

(中略)見方によっては、これは口紅のシェアリングサービスと同じだと言えるのです。使いたい分だけ使って、残りを次の人に売れば、差額と少額の送料だけが利用代ということになります。

(中略)莫大な数のユーザーがいるので、たとえ手元にある口紅がイエローで、ハロウィンパーティでしか使えないような色でも。意外と買い手がつくのです。

(中略)インターネットは、あなたにとってはいらなくなった口紅の色を、必要としている誰かと、あなたをつなげてくれる。(中略)それを「ありがとう」と言って受け取ってくれる人を見つけることができるということです。

 

インターネットの発達以前には、黄色の口紅なんて好む人を見つけることは難しかったかもしれない。しかし、今では簡単に買い手が見つかるし、買った人はその口紅を塗って「自分の好き」を表現し、それを良いと思った誰かがまた黄色の口紅を欲しがるかもしれない。その複雑なつながりを自然と作り、活用していることが彼らの強みである。先入観さえなければ、使いかけの口紅を売買するのは合理的なことなのだ。

 

iモードの立ち上げを支援したり、Google楽天執行役員を務めるなど、これまで最先端に関わってきた著者が言うのだから、彼らが“未来により近い”というのも説得力がある。

 

若い世代の価値観が理解できない人にはその説明書として、そして、まさに自分こそ“乾けない世代”だという人には尾原氏からの激励として読んでみると、勇気づけられるに違いない(私自身、まさにミレニアルズだ)し、新しい発見もあるだろう。分量からして読むのに時間がかかるものでもない。当てはまる人には、ぜひオススメしたい一冊だ。